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楕円軌道とケプラーの法則

(2020/12/18)
 公転周期を計算するには、ニュートン万有引力の法則から演繹的に導き出す必要があります。しかし、ブログでゼロから計算をするのは手間が掛かります。先人の知恵として、『ケプラーの法則』を用いて、公転周期を相対的に計算するほうがわかりやすいでしょう。この記事では『ケプラーの法則』を取り扱います。

  • 第1法則(楕円軌道の法則)
    • 惑星は、太陽を焦点のひとつとする楕円軌道上を動く。
  • 第2法則(面積速度一定の法則
    • 惑星と太陽とを結ぶ線分が単位時間に描く面積(面積速度)は、一定である。
  • 第3法則(調和の法則)
    • 惑星の公転周期の2乗は、軌道長半径の3乗に比例する。

第1法則(楕円軌道の法則)

 軌道長半径を a、離心率を ε、焦点座標を (0,0)、(-2aε, 0) としたとき、楕円軌道上の座標 (x, y) から二つの焦点への距離を足したものは、軌道長半径の2倍なので、次の方程式が導き出せます。

  • 楕円軌道: \sqrt{x^2+y^2}+\sqrt{(x+2a\varepsilon)^2+y^2}=2a

X Y (0,0) (-2aε, 0) (x, y) θ

第3法則(調和の法則)

 順序を変えて、第3法則から説明します。天体1の公転周期を P、軌道長半径を a とします。同一主星を回る天体2の公転周期を Pn、軌道長半径を na とします。天体2は、天体1よりも主星から n 倍 離れた軌道を回っています。

X Y 0 a na

  •  P^2:a^3=P_n^2:(na)^3
  •  P_n^2=\frac{(na)^3}{a^3}P^2=n^3 P^2
  •  P_n=n\sqrt{n}P

 軌道長半径が n 倍になると公転周期は n√n 倍になります。同じ主星を回る伴星同士は、軌道長半径の比さえわかれば、公転周期の比も計算式で導き出せます。その逆も成り立ちます。また、この法則から、軌道長半径が同じなら、離心率に関わらず公転周期は同一という結論も導き出せます。

第2法則(面積速度一定の法則

X Y (0,0) (-2aε, 0) (-aε, b)
 軌道長半径を a、離心率を ε、焦点座標を (0,0)、(-2aε, 0) としたとき、軌道短半径(b)は、底辺が 2aε で、斜辺が a となる二等辺三角形の高さになります。三平方の定理より次の関係が成り立ちます。

  • b^2+(a\varepsilon)^2=a^2
  • b=\pm a\sqrt{1-\varepsilon^2}
  • 軌道短半径: b=a\sqrt{1-\varepsilon^2}

 楕円の面積(S)は次の式で表せます。

  • 面積: S=\pi ab=\pi a^2\sqrt{1-\varepsilon^2}

 公転周期を P とすると、面積速度(ΔS)は次のようになります。

  • 面積速度: \Delta S=\frac{\pi a^2\sqrt{1-\varepsilon^2}}{P}

X Y (0,0) (-2aε, 0) ΔS ΔS

 楕円軌道上の天体の位置(x, y)を極座標形式で表し、それを楕円軌道の式に代入して距離(r)を求めます。

  • 位置: (x, y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)
  • 距離*1:  r=\frac{a(1-\varepsilon^2)}{1+\varepsilon\cos\theta}

 角速度(Δθ)が微小の場合、面積速度(ΔS)は、底辺を rΔθ、高さを r とした二等辺三角形と見なせ、次の関係が成り立ちます。

  • \Delta S=\frac{1}{2}r^2\Delta\theta

 角速度(Δθ)を求めます。

  • \Delta\theta=\frac{2\Delta S}{r^2}=\frac{2\pi a^2\sqrt{1-\varepsilon^2}}{P}\{\frac{1+\varepsilon\cos\theta}{a(1-\varepsilon^2)}\}^2
    =\frac{2\pi(1+\varepsilon\cos\theta)^2}{P(1-\varepsilon^2)^\frac{3}{2}}

参考

 離心率(ε)が 0 のときは、正円になり、馴染みのある公式が導き出せます。なお、P は公転周期です。

  • 距離:  r=\frac{a(1-\varepsilon^2)}{1+\varepsilon\cos\theta}=a
  • 面積: S=\pi a^2\sqrt{1-\varepsilon^2}=\pi r^2
  • 面積速度: \Delta S=\frac{\pi a^2\sqrt{1-\varepsilon^2}}{P}=\frac{\pi r^2}{P}
  • 角速度: \Delta\theta=\frac{2\pi(1+\varepsilon\cos\theta)^2}{P(1-\varepsilon^2)^\frac{3}{2}}=\frac{2\pi}{P}