円錐曲線軌道の三次元図示
(2021/01/02)
楕円軌道だけでなく、すべての円錐曲線に対して、軌道図を説明します。ここでは放物線軌道を例にします。双曲線軌道も原則は同じです。放物線や双曲線は、曲線が閉じることがないので、軌道長半径(a)は存在しません。他の指標が必要です。円錐曲線全部に共通で存在する近点距離(q)を使用します。近点距離(q)と離心率(ε)と傾角(θ)を使うことで、近点を X軸正の位置に置いた軌道図を描きます。その後、近点引数(ω)、軌道傾角(ι)、昇交点角(Ω)で順番に回転を行うことで、三次元の座標位置に移ります。
ω=0、ι=0、Ω=0
近点位置は X軸上にあります。進行方向外側に小さな正方形を置きます。近点位置から原点方向に短い線を引きます。同様に、Y軸との交差点から原点方向に短い線を引きます。
ω≠0、ι=0、Ω=0
近点引数(ω)で回転を行います。近点引数(ω)がゼロのときは、それぞれ、X軸上、Y軸上にあった補助線が別に位置に移ります。
ω≠0、ι≠0、Ω=0
軌道傾角(ι)で縦横比を変えます。軌道面は、X軸で XY平面と交わるので、交わった点から、原点方向と Z座標が正になる方向に向けて、小さな線を引きます。この補助線の縦横比が cos(ι) と等しくなります。
ω≠0、ι≠0、Ω≠0
昇交点角(Ω)で座標に回転を行うことにより、X軸上の点が別の箇所に移ります。それぞれの補助線から放物線の軌道要素を見積もれるようになります。
楕円軌道の三次元図示
(2021/01/02)
軌道図を描くと、より式の説明が伝えやすくなることがわかりました。今後は軌道図を積極的に描いていきたいと思います。ただ、天体が三個以上あると、すべての天体が同一平面上で軌道を通ることはありません。三次元の座標が必要になります。しかし、画面は二次元であり、三次元の座標を表すには制約があり、工夫が必要になってきます。この記事では、今後、三次元座標の軌道を表すための目安をお知らせします。
楕円軌道の形状を決めるには、軌道長半径(a)と離心率(ε)があれば十分です。しかし、三次元座標を決めるには、近点引数(ω)、軌道傾角(ι)、昇交点角(Ω)を加える必要があります。ぞれぞれがゼロのときと非ゼロのときを図で示します。
ω=0、ι=0、Ω=0
- 近点距離:
近点と遠点を示すために原点に向かって短い補助線を伸ばします。Y軸と交わる点にも原点方向に向かって短い補助線を伸ばします。軌道短半径を示すために、軌道短半径に当たる座標から楕円の中心に向かって短い補助線線を伸ばします。進行方向を示すために、近点から進行方向に向かって、小さな正方形を描きます。
ω≠0、ι=0、Ω=0
- 近点距離:
近点引数(ω)で回転を行うことで各補助線が X軸・ Y軸からずれても、楕円の近点遠点・軌道短半径の位置がわかります。
ω≠0、ι≠0、Ω=0
- 近点距離:
軌道傾角(ι)で軌道を傾けます。Z軸上方から真下に見ることでしか図を示せないので、Y座標に cos(ι) を掛けて、縦方向に縮めることで示します。この時、軌道面と X軸が交わる点に短い補助線を二本引きます。一本は原点方向に、一本は Z軸上方に向けて引きます。なお、この線の縦横比から cos(ι) を見積もれます。
ω≠0、ι≠0、Ω≠0
- 近点距離:
最後に昇交点角(Ω)で回転を行います。これで、補助線から軌道要素のイメージをつかめます。
円錐曲線軌道と極座標のまとめ
(2020/12/30)
極座標を使うことで、円錐曲線に含まれる正円、楕円、放物線、双曲線がすべて同じ軌道位置と軌道速度(v)の式で表せることがわかりました。そうなると、経過時間(t)と移動距離(l)も同じ式になると思われます。この記事で全ての式をまとめてみます。
放物線、双曲線に広げた場合
放物線と双曲線は開いた曲線なので、軌道長半径(a)や公転周期(P)が実体としてありません。代わりに近点距離(q)と近点最小速度(V)を導入します。近点最小速度(V)は、ここで新たに定めた用語です。これは、近点距離(q)を半径とする円軌道を公転する速度と一致します。これより遅いと、さらに主星に近づき近点距離(q)を保てません。
軌道長半径(a)と公転周期(P)を近点距離(q)と近点最小速度(V)に置き換えることで、楕円軌道の式を放物線、双曲線にまで広げることができます。
- 軌道位置:
- 軌道速度:
- 経過時間:
- 移動距離:
経過時間と移動距離はまだ区分求積法による検算を行っていませんが、今のところ正しいと思われます。検算は今後の記事で必要になったときに行います。なお、式の変形には下記の計算を用いました。
- 軌道位置と経過時間で使用
- 軌道速度で使用
- 経過時間で使用
三次元の円錐曲線軌道と軌道速度
(2020/12/27)
いよいよ、正円、楕円、放物線、双曲線を含めたすべての円錐曲線の軌道速度ベクトルを三次元で表します。近点距離を q、離心率を ε、偏角を θ、近点距離を半径とする正円の軌道速度を V とすると次の式が成り立ちます。
- 正円(半径:q)の軌道速度: (P は公転周期)
- 軌道速度ベクトル:
まず、XY 平面上で、近点引数(ω)で回転させます。
次に、軌道傾角(ι)と昇交点角(Ω)を用いて三次元に回転させることで、三次元の軌道速度ベクトルが求まります。
Δx'、Δy' を置き換えます。
二次元の円錐曲線軌道と軌道速度
(2020/12/27)
円錐曲線軌道は、正円も楕円も放物線も双曲線も全く同じ式で表せることが分かりました。軌道長半径を a、近点距離を q、離心率を ε、偏角を θ とすると次の式になります。唯一の違いは、分母が 0 や負数になれないので、放物線と双曲線のときは、偏角(θ)の範囲に制約があることです。
- 近点距離:
- 軌道位置:
そうなると、当然、軌道速度も楕円軌道の式をそのまま使えるという考えが浮んできます。
- 軌道速度ベクトル:
ベクトルからスカラーを除いた部分は、円錐曲線の定義からそのまま使えます。これは、二つの焦点に向けたベクトルの交差角を二等分にする線が円錐曲線の法線ベクトルになり、それに対して 90° もしくは 270° 回転させたものが、進行方向ベクトル(接線)*1になるという共通の性質があるからです。
ところが、スカラーの部分は分母に「1 - ε」があり、これがある限り特異点ができてしまい、使えません。しかも、放物線と双曲線には実体としての軌道長半径(a)も公転周期(P)も存在しません。これらの要素を式から除く必要があります。ここで「ケプラーの第三法則」の出番です。公転周期(P)の二乗は軌道長半径(a)の三乗に比例します。近点距離(q)を半径とする正円の軌道速度を V、公転周期を Pq とすると、次の関係が成り立ちます。
「ケプラーの第三法則」で次の関係が成り立ちます。
Pq と軌道長半径(a)を消し去ります。
この式を軌道速度ベクトルのスカラーの部分に当てはめて、公転周期(T)を式から消します。
これで、放物線、双曲線で実体のない軌道長半径(a)と公転周期(T)を消し去ることができ、なおかつ、分母の特異点(1-ε)もなくなりました。
- 軌道速度ベクトル:
近点距離(q) とそれを半径とした正円の軌道速度(V)が分かれば、すべての円錐曲線軌道の軌道速度が分かります。